あけにーブログ 〜フランスで考えたあれこれ

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何故フランス人はワクチンを接種したくないのか?

 ついに、フランス全土の老人ホームなどでコロナウイルスのワクチン接種が始まった。まずは高齢者、次は医療従事者、疾患のある患者の順番となり、健康な人へ渡るのは2021年の春~夏になるという。

 当然、早く自分の番が回ってこないかなあと思っていたところ、なんと、フランス人の59%は「(Covidの)ワクチンを接種するつもりはない」というアンケート結果が出ていた(Ifopが2020年11月26-27日の間に18歳以上の1013名を対象に行ったオンラインインタビュー)。もう一つの世論調査では、14%が「ワクチンを接種するつもり」、36%が「接種するだろう」とし、反対に29%が「恐らくワクチンを受けない」、21%が「受けないだろう」としている(Odoxa-Dentsu Consultingが11月10-11日に1005人を対象に行った調査)。

 つまり、二人に一人が打たないということだ。15カ国を対象にワクチン接種の意向を調査したデータでも、80%以上を超えるインド、中国、韓国を別にしても、英国(79%)、カナダ(76%)、日本(68%)、ドイツ(69%)などは「接種するつもり」が60%以上を超える。肯定的な回答が50%代のフランスは先進国の中でも最下位となっている。

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Credit photo PHANIE, www.lequotidiendumedecin.fr

 フランス人がワクチンに懐疑的なのは何故だろう?もうすぐ、第3回目のロックダウンに突入するかもしれない状況下、全国民が喜んで打ちたいと思わないのだろうか?

 身近のフランス人に聞いてみたところ、「コロナウイルスの感染が始まった当初、マスクが足りなかったために”マスクは有効ではない”などとデタラメを言うから政府への不信感が募ったのだ」との答えが返ってきた。果たしてそうなのだろうか。

 この質問に答える非常に興味深い記事を見つけた。

www.francetvinfo.fr

 上記の記事ではこの根深い不信感の理由として幾つかの原因を挙げている。

1.過去の医療スキャンダルによる政府への不信感

2.ワクチンを拒否することで政府へ懐疑的という政治的な意思表示

 この不信感については公衆衛生と感染症予防専門家であり、公衆衛生高等研究院で社会心理学の研究者ジョスリン・ロード氏のインタビューが面白い。同氏によるとフランス人の不信感の始まりは2009-2010年頃の新型インフルエンザ(H1N1)から始まったという。

 フランスは近代細菌学の祖と言われる微生物学者ルイ・パスツールが狂犬病などのワクチンを開発し、その発展に一役買ったこともあり、2005年までは90%のフランス人がワクチンを支持していた歴史があるという。

 ところが、新型インフルエンザの感染に対応するために当時バシュロー保険大臣が様々な製薬会社に数億ユーロ相当の9400万回分のワクチンを注文した。しかし、注文したワクチン株の600万回分しか使用しなかったのだ。バシュロー保険大臣にアドバイスした多くの専門家が製薬会社と癒着していたのではないかと問題視された。

 これより、政治家と製薬会社がつるんで「金儲けをしているのではないか」という懐疑案が浮上したという。これに加えて製薬会社セルビエが糖尿病薬メディアトールの副作用による薬害が社会問題となり、製薬会社への不信感は更に募ったと分析する。

Edition du soir Ouest France

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