神への冒涜罪で首を切られた歴史教師 フランス社会を震撼させる
2020年10月16日、フランスが震撼した。中学校の歴史の教師が、学校付近の道端で無残に首を切断されたからだ。事件は、表現の自由に関わる授業で、被害者の教師が生徒に風刺画を見せたことに端を発した。風刺週刊誌シャーリー・エブド誌に掲載された、テロ事件に纏わるムハンマドの風刺画を見せたのだ。
フランス中が震撼したのは、ニュースで報道されたときの「Decapitation*」という一つの単語でその野蛮さが伝わったこと(犯人は警察に射殺される前に、インスタグラムに被害者の首を載せている)や、フランス革命からフランス社会を支える価値観、「自由・平等・友愛」の一つである「表現の自由」が脅かされたからだ。
※ラテン語で頭"Cap"を体から離す"de"という語源で、日本語で言う”首を切る”というセンテンスが凝縮されている
またこの事件で燻っていた社会問題が浮き彫りにされた。それはフランス社会に共存する多くのイスラム移民、フランス国籍となったイスラム教徒とフランス人との溝だ。今回の事件は、これを更に大きくした。今後、フランス社会でのイスラム教徒への風当たりはさらに厳しくなるだろう。
事件は、殺害された教師Samuel Paty氏が授業をする前に、態度が悪いという理由で退出させられたイスラム教徒の女生徒から始まる。彼女は3日間の登校禁止処分を受けていたにも関わらず、授業でポルノ画を見せられた※と両親に告げ口をした。両親は学校に苦情を持ち込んだ後、これをネットに載せ、イスラムコミュニティが取り上げた。こうして、インスタグラムなどのソーシャルネットワークが伝手となり離れた地域に住んでいた18歳のテロリストが被害者の教師を特定することが出来たのだ。
※シャーリーエブド誌の風刺画は、預言者のお尻から星が出ている、という内容であった。
つまり、表現の自由を教えることによってどんな教師も殺害される可能性があることを示唆しているのである。
現在、フランス各地で表現の自由を支持するデモが行われている。
写真: L'express.fr より